貸切バスの安全対策
貸切バスの安全対策
安全、それは貸切バスの利用を考える全ての人にとって最も重要なポイントです。
2012年関越自動車道でおきた高速バス事故や2016年に軽井沢で発生したスキーバスの転落事故といった痛ましい事故から改めて「安全」であることがバス選びの優先事項になりました。
貸切バス.netでも日本バス協会が定める「安全評価認定制度」 などを取り上げ国やバス会社の取り組みを紹介してきました。
今回はさらに踏み込んで、バスに設置されている安全対策を調べていきたいと思います。
安全評価認定制度の認定基準に指定されている「アルコール検知器を使用した点呼」、「デジタコの導入」、「ドライブレコーダーの導入」はセーフティバスの必須項目ですが、それ以外の装備についてはバス会社によって異なります。
セーフティバスであること以外の判断基準や付加価値を知ってもらうことでより安心して利用できる貸切バスを選ぶことができますので、最後までお付き合いくださいね。
貸切バスの安全装置
安全評価認定基準に関わるもの
安全評価認定制度の認定基準には以下の3項目があります。
1.安全性に対する取組状況
2.事故及び行政処分の状況
3.運輸安全マネジメント取組状況
「安全性に対する取組状況」においては以下の装置を導入し、高いレベルが維持されているかなどが審査されます。
アルコール検知器
事業用自動車の運転者の飲酒運転を根絶するため、平成23年5月1日より運送事業者が運転者に対して実施することとされている点呼において、運転者の酒気帯びの有無を確認する際にアルコール検知器を使用すること等が義務化されました。
- 営業所ごとにアルコール検知器を備えること。
- 遠隔地で乗務を終了または開始する場合には、運転者に携帯型のアルコール検知器を携行させる。
- 乗務の開始前、終了後等において実施することとされている点呼の際に、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子を目視等で確認することに加え、アルコール検知器を使用することにより運転者の酒気帯びの有無を確認する。
ドライブレコーダー
令和元年12月1日から完全義務化
新車についてはすでに平成29年12月1日から義務化されています。令和元年からすでに登録済みの車両についても装着が義務付けられました。
- カメラは車両前方だけでなく運転手の運転動作も記録しなくてはならない
- 前方カメラには映る範囲、解像度、フレームレートに基準が設けられている
- 瞬間速度、加速度の記録も求められる
- 連続して24時間以上記録できなくてはならない
デジタル式運行記録計(デジタコ)
運行記録計の一種で車両の運行にかかる速度・時間等を自動的にメモリーカード等に記録する装置です。
- 運転者に対する高度な労務管理
- 運転者に対する高度な安全運転教育
- 運転者に対する省エネ運転 の推進を通じた安全運転の促進
ASV(先進安全自動車)
高度道路交通システムの一部で、自動車に様々な先端技術を用いることで車両そのものが運転を支援します。いくつかのASV技術はその搭載状況をステッカーによって車体に表示することができます。
それにより安全情報の「見える化」が図られ、お客様が自分たちの利用するバスに搭載された安全技術を把握できるようになります。加えて先進安全技術が搭載されていない古い車両から新型車への代替を促進することを目的としています。
具体的には以下のいずれかの装置を搭載した車両のことです。
後側方視界情報提供装置(後側方カメラ)
車両後方に取り付けたカメラによって、バック時の事故を軽減することが出来る装置。
タイヤ空気圧注意喚起装置(タイヤ空気圧警報)
タイヤの空気圧が適正でない場合に警告する装置。
ふらつき注意喚起装置(ふらつき警報)
車両がふらついているのを検知した際に、警報により注意を促す装置。
車間距離警報装置(車間距離警報)
前方車両との距離を測定し、車両が回避できない速度の場合には警告する装置。
車線逸脱警報装置(車線逸脱警報)
ウインカーを出さずに車線を逸れた際に、警報により注意を促す装置。
前方障害物衝突被害軽減制動制御装置(衝突被害軽減ブレーキ)
前方車両に衝突しそうな車間距離になると、警報にて注意を促し自動でブレーキをかけることで衝突による被害を軽減する装置。
定速走行・車間距離制動装置(高速ACC)
高速走行時に運転者が定めた速度を自動で維持し、走行する装置。また、車間距離が狭くなると自動でブレーキをかけ、適正な車間距離を保つ。
車両横滑り時制動力・駆動力制御装置(ESC)
カーブなどで車両の横滑りを検知すると、適切なタイヤにブレーキをかけることで横滑りを防止する装置。
ドライバー異常時対応システム
ドライバーが安全に運転できない状態に陥った場合に異常を検知し車両を自動的に停止させる 。
最後に
いかがでしたでしょうか。現在日本ある貸切バス・高速バスは約6万台。しかしながらASV技術を搭載した新車の生産台数は年間3000台ほどです。
貸切バス事業者は車両の購入後平均して17年は使用するというデータがあり、バス会社の経営状況を考慮すれば全てのバスがASV技術搭載車になるまではまだまだ時間がかかりそうです。
業界としてはバス事業が5年ごとの更新制度になり、安全対策への投資計画が厳しく審査されるようになりました。また、計画的にどのように安全対策に取り組むかなど、年1回、安全情報を届け出ることが求められています。
反面、安全基準を満たすための設備投資ができないことによって廃業を余儀なくされるバス事業者も増加しているという新たな問題も起こっています。
しかし、いずれにせよ安全を最重視するべきであることに異論はありませんので、貸切バスを利用したいという人にとっては「セーフティバス」や「ASV技術搭載車」であることが安全性を測る基準として活用できるでしょう。
貸切バスを利用する際は、単にコストの面だけでなく安全を考えセーフティバスかどうか、先進技術の搭載がなされた車両なのかといったことに注目してみることをオススメします。